近年、都市部の喧騒を離れ、自然豊かな農山漁村で心身をリフレッシュする「グリーンツーリズム」が注目を集めています。グリーンツーリズムとは、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことを指します。この取り組みは、都市と農村の交流を促進し、農山漁村地域の活性化に大きな役割を果たしています。
グリーンツーリズムの魅力は、単なる観光にとどまらず、農業体験や農家民宿での宿泊、地域の伝統文化に触れる機会など、多様な体験を通じて農村の暮らしを深く知ることができる点にあります。都市住民にとっては新鮮な体験となり、農山漁村にとっては地域の魅力を再発見し、誇りを持つきっかけとなっています。
さらに、グリーンツーリズムは農山漁村の経済活性化にも貢献しています。観光客の受け入れによる直接的な経済効果だけでなく、地域の特産品や農産物の販売促進、新たな雇用創出など、幅広い波及効果をもたらしています。
本記事では、グリーンツーリズムの定義や歴史、そのメリットとデメリット、さらに具体的な自治体の取り組み事例を紹介します。農山漁村の持続可能な発展に向けた重要な取り組みであるグリーンツーリズムについて、詳しく解説していきましょう。
グリーンツーリズムとは
グリーンツーリズムは、農林水産省が推進する取り組みです。「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」と定義されています。都市部で暮らす人々に自然豊かな場所で余暇を過ごす体験を提供し、農山漁村地域の活性化を促すことが目的です。一次産業が主たる地域に新たな産業を生むことで、地域経済の再生・活性化や、持続的な環境保全を支える仕組みづくりを目指しています。
この背景には、欧州のバカンス文化があります。欧州では農村に滞在してバカンスを過ごすという余暇活動が定着しており、これを踏まえて日本でも平成4年7月にグリーンツーリズムが提唱されました。平成6年には「農山漁村余暇法」が制定され、農林水産省は農家での宿泊体験を行う「農泊」をさらに推進しようと、旅館業法や旅行業法など各種法令の規制緩和も進めています。
近年では国内の旅行客だけではなく、インバウンドを推進する動きもあります。農林水産省も外国人旅行者向けのプロモーション事業を行うなど、グリーンツーリズムは国際的な市場をねらう産業に発展しています。

グリーンツーリズムのメリット・デメリット
メリット
グリーンツーリズムには、飲食・購買・宿泊・体験・景観という5つの機能があり、これらの機能を充実させることで、地域全体への経済的波及効果が期待できます。また、地域活性化にもつながり、受け入れ住民と観光客の交流による社会的活性化の効果も期待できます。
デメリット
一方で、来訪者を受け入れる農家への負担や、グリーンツーリズムの運営に必要な人的リソースや資金の確保など、地域のリソースを消費するデメリットもあります。
自治体の事例紹介(栃木県大田原市・青森県)
case.1 栃木県大田原市
大田原市のグリーンツーリズム事業は、官民共同で設立した法人「株式会社大田原ツーリズム」が中核を担う独自の連携体制が特長です。この法人がグリーンツーリズム事業の窓口となり、学校や旅行会社、企業、団体などから旅行客を受け入れるほか、コーディネーターとして事業全体の取りまとめを行っています。大田原市は首都圏への食糧の大規模供給源でもあり、広大な耕作地を活かした大規模な農業体験などが特徴的です。

参考:https://www.city.ohtawara.tochigi.jp/docs/2013082775931/
参考:https://www.ohtawaragt.co.jp/
case.2 青森県
青森県は県内各地の170施設でグリーンツーリズムに取り組む自治体です。その中には、国内の学生やインバウンドの来訪者も積極的に受け入れる教育旅行型のプログラムもあります。「農家民宿」では、農作業体験や地元食材を使った料理づくりなどを通じて「食と農」を学べる機会を提供しています。これにより、食育だけでなく「青森ブランド」の地位向上やPRにも貢献しています。

参考:https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/kozoseisaku/green-tourism2.html
高齢化や過疎化の進む地域も持続可能な運営へ
グリーンツーリズムは、高齢化や過疎化の進む農山漁村地域に新たな産業を生み出してきました。近年ではインバウンド客を受け入れる動きもあり、今後も成長を見込める産業です。
農山漁村に産業振興や地域活性化を促し、持続的な地域の運営を実現するために、地方自治体もグリーンツーリズムについて理解を深めていく必要があります。
まとめ
グリーンツーリズムは、農山漁村地域の活性化と持続可能な発展に向けた重要な取り組みです。本記事で解説したように、都市と農村の交流促進、地域経済の活性化、伝統文化の継承など、多面的な効果が期待できます。一方で、受け入れ側の負担や運営リソースの確保など課題もありますが、地域の特性を活かした独自の取り組みを展開することで、これらの課題を克服し、さらなる発展が期待できます。
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