近年、観光業界で注目を集めているのが「ユニバーサルツーリズム」です。年齢や障がいの有無、国籍を問わず、誰もが気兼ねなく楽しめる旅行のあり方を指す言葉ですが、その重要性は日に日に高まっています。
日本は超高齢社会に突入し、2025年には65歳以上の人口が全体の30%を超えると予測されています。また、2016年に施行された障害者差別解消法により、社会のあらゆる場面でバリアフリー化が進んでいます。こうした背景から、観光分野においても、高齢者や障がい者、外国人旅行者など、多様なニーズに応える「ユニバーサルツーリズム」の実現が求められているのです。
ユニバーサルツーリズムは、単なるバリアフリー対応にとどまりません。それは、すべての人が旅の喜びを分かち合える、より豊かな旅行体験を創造する取り組みなのです。観光地や宿泊施設、交通機関など、旅行に関わるすべての要素において、誰もが快適に過ごせる環境づくりを目指しています。このような包括的なアプローチにより、観光産業全体の質的向上と新たな価値創造が期待されています。
ユニバーサルツーリズムの背景
ユニバーサルツーリズムが注目を集める背景には、日本の超高齢社会の進行と、2016年に施行された障害者差別解消法による社会的なバリアフリー化の推進があります。高齢者や障がい者、外国人旅行者など、多様な観光ニーズに応えるためのユニバーサルツーリズムの実現が求められているのです。
ユニバーサルツーリズムの目的と意義
ユニバーサルツーリズムの目的は、年齢や障がいの有無、国籍を問わず、すべての人が気兼ねなく旅行を楽しめる環境を整備することにあります。これにより、これまで旅行に行きづらかった高齢者や障がい者、外国人旅行者など、多様な観光客の獲得が期待できるほか、家族や友人とともに旅行を楽しめる機会の増加にもつながります。
ユニバーサルツーリズムの特徴と魅力
高齢者や障がい者に優しい観光の提供
ユニバーサルツーリズムでは、高齢者や障がい者の特性に合わ
せた観光コンテンツの提供や、バリアフリー化された施設の整備など、さまざまな取り組みが行われています。これにより、これまで旅行に行きづらかった層の観光需要を取り込むことができます。
家族旅行やグループ旅行の促進
ユニバーサルツーリズムの推進により、高齢者や障がい者、子供連れなど、多様な旅行者が安心して旅行に参加できるようになります。これにより、家族旅行やグループ旅行の需要が高まり、観光地への集客力も高まることが期待されます。
国内外の観光客の集客効果
ユニバーサルツーリズムは、高齢者や障がい者、外国人旅行者など、これまで観光需要が低かった層の取り込みにも効果的です。これにより、国内外の多様な観光客を集客することができ、観光地の賑わいにつながります。
誰もが楽しめる観光地の魅力
ユニバーサルツーリズムの推進により、高齢者や障がい者、外国人旅行者など、多様な旅行者が安心して楽し
める観光地が生み出されます。これにより、観光地の魅力が高まり、リピーター客の増加や新規客の獲得にもつながることが期待されます。
地域経済への貢献と観光業界の競争力向上
ユニバーサルツーリズムの推進は、観光客の増加による地域経済への好影響が期待できます。また、観光業界においては、これまでの観光客層に加えて新たな需要を取り込むことで、競争力の向上にもつながります。
ユニバーサルツーリズムの事例
視覚障がい者向けツアーの取り組み（奈良県）
2019年10月、奈良県では「五感で楽しむ日本の歴史」をテーマにした、視覚障がい者と健常者が一緒に参加するユニバーサルツーリズムツアーが行われました。参加者は、古墳の周囲を回ったり、博物館で出土品に触れたり、寺院の鐘の音や自然の音を楽しんだりと、視覚以外の五感を使って観光を体験しました。
参考：
聴覚障がい者向けの観光案内実証実験（クラブツーリズム）
2017年、クラブツーリズム株式会社は、聴覚障がい者を対象にした音声認識ソフト「UDトーク」を活用した観光案内の実証実験を行いました。「UDトーク」は、話した内容を同時に字幕で表示するため、聴覚障がい者とのスムーズなコミュニケーションが可能になります。
参考：
発達障がい者向けの模擬旅行体験（成田空港）
2019年、成田空港で発達障がい者を対象とした模擬旅行体験が行われました。空港や飛行機での手続きが難しい発達障がい者が、実際の機内や空港の雰囲気を体験することで、旅行に対するストレスを軽減することを目的としたものです。
参考：
各地域のユニバーサルツーリズム推進事例
沖縄県では2007年に「観光バリアフリー宣言」を行い、那覇空港にバリアフリー観光案内所を設置するなど、ユニバーサルツーリズムの推進に取り組んでいます。また、長野県では「信州型ユニバーサルツーリズム」として、山や自然を活かしたアウトドアフィールドの整備に力を入れています。
沖縄観光バリアフリー宣言：
まとめ
ユニバーサルツーリズムは、高齢化社会や障害者差別解消法の施行など、社会的背景を受けて注目されてきました。高齢者や障がい者、外国人旅行者など、これまで旅行に行きづらかった層の観光需要を取り込むことができ、観光客の多様化や地域経済への貢献が期待できます。
今後は、施設のバリアフリー化や情報提供の充実など、ハード・ソフト両面での取り組みが重要になってきます。また、相手の立場に立って真のユニバーサルツーリズムを実現していくことが、観光業界の競争力向上にもつながるでしょう。
コメント