はじめに
皆さん、こんにちは!「ドボク探検倶楽部」略して「ドボたん」の三上です。私は土木構造物に目がない、いわゆる「ドボクスキー」です。普段は、様々な土木構造物を見て楽しむ活動をしているのですが、今回は特に興味深い廃線ウォークツアーに参加してきました。それについて前編と後編に分けてご紹介します。
なぜ廃線に興味があるのかというと、廃線跡はその土地の歴史や技術の結晶だからです。廃線ウォークを通じて、かつての鉄道の繁栄と衰退を肌で感じることができるからです。そんな私が今回参加したのは、信越本線の廃線ウォークツアーです。
信越本線といえば、碓氷峠を越えるために建設された日本で唯一のアプト式鉄道の路線です。今回のツアーでは、旧信越本線の遺構を歩き、その歴史と技術を学ぶことができます。私も初めての体験なので、期待と少しの不安もありましたが、いざ参加してみるとその魅力に圧倒されました。
出典:web.tuat.ac.jpj⧉」|web.tuat.ac.jp
http://web.tuat.ac.jp/~nagaimu/member/mem/marumo/souken/hist.html
ツアーの概要は以下の通りです。日程はゴールデンウイークの最終土曜日、参加者は小学生から熟年のご夫婦まで様々な年齢層で、総勢35人が集まりました。ルートは、横川駅から旧信越本線の廃線跡を巡り、途中でいくつかの歴史的なスポットを訪れます。この記事は前編であり、後編では新しい発見や感動をお伝えしますので、ぜひご期待ください。
碓氷第三橋梁
出典:「碓氷第三橋梁(めがね橋)の写真一覧 – じゃらんnet⧉」|jalan.net
https://www.jalan.net/kankou/spt_10401ae2180022200/photo/
横川駅周辺の探索
スタート地点の横川駅に早朝に到着しました。まず驚いたのは、駅前の側溝に設置されているラックレールのグレーチングです。このラックレールは廃止された後、側溝の蓋として再利用されています。知る人ぞ知る、ここは廃線ウォークの入り口として人気のスポットです。廃線の痕跡をこんなところで見つけることができるとは、感動です。
碓氷第三橋梁への移動
次に向かったのは、「めがね橋」の愛称で知られる碓氷第三橋梁です。横川駅から車で10分ほど走ると、その壮大な姿が目に入ります。この橋梁は1893年に建設され、全長約91メートル、高さ約31メートルの4連アーチ橋です。驚くべきは、橋梁全体が200万個を超えるレンガでできていることです。このスケール感は圧巻です。
碓氷第三橋梁の歴史
碓氷第三橋梁は、明治時代の技術の結晶として重要な役割を果たしました。アプト式鉄道の一端を担い、明治時代の土木技術の進歩を象徴しています。この橋はイギリス人技師ポーナルの指導のもと、日本の土木技師古川晴一らが設計したもので、「イギリス積み」という技法で建設されました。イギリス積みとは、レンガの長手と小口を交互に積み重ねる方法で、強度と美しさを兼ね備えています。
橋の上からの眺望も素晴らしいです。明治時代にはここを蒸気機関車が走っていたかと思うと、その情景が目に浮かんできます。さらに、橋から続く第6号トンネルも見逃せません。レンガ造りのトンネルはその歴史的価値と重厚感が感じられる場所です。
アプトの道と旧丸山変電所
出典:「信越本線の歴史 | 廃線ウォーク⧉」|廃線ウォーク
https://haisen-walk.com/history
出典:「旧碓氷峠鉄道施設 旧丸山変電所蓄電池室 文化遺産オンライン⧉」|bunka.nii.ac.jp
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/125027
廃線ウォークの開始
碓氷第三橋梁を堪能した後は、再び横川駅に戻り、いよいよ本格的な廃線ウォークが始まります。参加者全員がヘルメットとライトを持ち、インカムを装着して出発しました。
旧丸山変電所の紹介
まずは旧丸山変電所に向かいます。ここは1912年に建設され、信越本線の電化を支えた重要な建物です。蒸気機関車のばい煙問題を解決するために、日本で初めて電化された信越本線に交流6,600ボルトを直流に変換する役割を果たしていました。廃墟のような雰囲気ですが、その建築の美しさと歴史的価値は一見の価値ありです。
アプトの道散策
旧丸山変電所を後にし、「アプトの道」を進みます。レンガ造りの建物や遺構が次々と現れ、歴史の中を歩いているかのような感覚に浸ります。そして、天気も良く、新緑の中でのウォーキングはまるでタイムスリップしたかのようです。
峠の湯での昼食休憩
出典:「峠の湯 – 安中市ホームページ⧉」|city.annaka.lg.jp
https://www.city.annaka.lg.jp/page/2096.html
「アプトの道」を進み、峠の湯に到着。ここで昼食休憩を取ります。配られた横川名物「峠の釡めし」は絶品で、肌寒い中での温かい釡めしは心から温まる一品でした。参加者同士の会話も弾み、和やかなひとときを過ごしました。
国鉄一の急勾配と片峠
横川~軽井沢間の勾配
昼食後、再び廃線ウォークを再開。横川駅から軽井沢駅へ続くこのルートは、最大勾配66.7‰という国鉄最大の急勾配を誇ります。日本の鉄道で一般的な勾配は25‰が上限とされていますが、ここはその2倍以上。この急勾配を克服するためにアプト式が採用され、日本の鉄道史においても特別な位置を占める区間です。
出典:「軽井沢駅 – Wikipedia⧉」|ja.wikipedia.org
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%BD%E4%BA%95%E6%B2%A2%E9%A7%85
片峠地形の成り立ち
なぜこのような急勾配が存在するのかというと、「片峠」という特異な地形に関係します。霧積川による浸食の影響で、片側だけが急勾配になってしまったため、トンネルや橋を掘ってもこの急勾配は避けることができなかったのです。このことからも、片峠地形の影響とその克服には多大な技術が投入されたことが伺えます。
新線跡の歩行
新線跡を歩いていると、レール、枕木、バラストなどが現役当時のまま残っており、その状態が非常によく保存されています。この風景を見ながら歩くと、かつてここを走っていた列車の姿が容易に想像できます。
トンネルと橋梁の体験
特に印象的だったのは、第2トンネルの内部です。ここは非常に長く、湧水によって所々に水たまりができています。ガイドさんの指示で全員がライトを消すと、一面が真っ暗になり、昔の機関士の視点を追体験できます。また、トンネルを出た途端に広がる碓氷川の景色も圧巻で、橋梁の上から見る碓氷第三橋梁の姿も新たな発見でした。
出典:「信越本線旧線(笠島~青海川) | 廃鉄の処女Ⅱ⧉」|ameblo.jp
https://ameblo.jp/ironmaiden666666/entry-12772858546.html
まとめ
今回の廃線ウォークツアーは、信越本線の歴史と技術を深く学ぶことができた素晴らしい体験でした。横川駅から碓氷第三橋梁、旧丸山変電所、そして新線のトンネルや橋梁を巡る中で、現代の技術の礎となった数々の工夫や技術革新に感動しました。
また、本ツアーを通じて、廃線ウォークの魅力を多くの人に紹介できたことも喜びです。廃線にはまだまだ多くの魅力が隠されており、歴史や技術に興味がある方にはぜひ参加して欲しいと思います。
コメント