日本には古くから湯治という民間療法があります。湯治とは、温泉に浸かって身体の不調を治すだけでなく、心のケアも目的とした健康法です。かつては、少なくとも1週間ほど、基本的には3週間という長い期間が必要とされ、気軽にできるものではありませんでした。
しかし、現代のライフスタイルでは、そのような長期の滞在は難しいもの。そこで注目されているのが、週末や連休を利用して短期間でも効果が期待できる「現代湯治」です。日常の喧騒から離れ、温泉でゆっくりと過ごすことで、心身ともにリフレッシュできると人気を集めています。
この記事では、現代の湯治についてわかりやすく説明し、さらに湯治 関東エリアでおすすめの湯治場を4選ご紹介します。群馬県の積善館本館、埼玉県のおがわ温泉 花和楽の湯、神奈川県の有馬療養温泉旅館、栃木県の芦野温泉は、いずれも特色豊かな温泉地です。疲れた心と体を癒したい方、週末にプチ湯治でリフレッシュしたい方は、ぜひ参考にしてください。
出典:「本館 | 四万温泉 積善館(せきぜんかん) 群馬の温泉旅館⧉」|四万温泉 積善館(せきぜんかん) 群馬の温泉旅館
https://www.sekizenkan.co.jp/honkan/
湯治とは何か?
湯治とは、文字通り温泉に入って病気を治療する温泉療法のことです。日本では奈良時代にはすでに湯治の習慣があったとされていますが、当時は権力者など一部の人に限られていました。一般の方にも湯治が広まり始めたのは、街道が整備された江戸時代以降になります。昔ながらの湯治は、一般的には3週間は滞在が必要と言われてきました。そのため、湯治に行くことは、大きなイベントの一つとされていました。
温泉療法のメカニズム
温泉は、古くから怪我や病気に効果があると言われてきました。温泉に入ることで、その成分が皮膚を通して身体に入ってきます。さらにお湯によって血行が良くなり、免疫力の向上やリラックス効果が期待できます。ただし、温泉療法は、必ず効果があるわけではありません。医療行為ではなく、民間療法として位置づけられているため、過度な期待は避けましょう。効果には個人差があることをご理解ください。
伝統的な湯治と現代湯治の違い
温泉施設には、湯治に特化した宿泊施設と、一般的な宿泊施設があります。伝統的な湯治に特化した湯治宿は、長く滞在して体を癒すことが目的です。そのため、宿泊費や食事代は低く抑えられ、食事は健康的なものが提供されます。また、施設によっては、自炊できる場所があるのも特徴です。
これに対し、現代の湯治は、期間の長さや目的に大きな違いがあります。かつては怪我や病気の人が温泉地に長期間滞在して療養することが一般的でしたが、現代ではそんなに長い期間休むことは難しいのが現実です。近年は交通やメディアが発達し、遠くへ行くことも以前より簡単になりました。その結果、療養の場所だった温泉は、ニーズの変化にあわせて観光地としての側面も持つようになったのです。現代では、日帰り温泉や1泊の時短で疲れやストレスを癒す「現代湯治」が人気になっています。たとえ短期間であっても、日常とは違う環境に身を置くことで、リラックスができ気分転換になります。温泉自体の療養効果とあわせて、傷や病気を治す湯治から、病気を予防するための湯治へと変化してきたと言えるでしょう。
「新・湯治」の概念
「新・湯治」とは、環境省が推進した、現代のライフスタイルに合わせた温泉地の過ごし方の提案です。温泉地の自然や文化を楽しみながら、温泉に入って心身をリフレッシュすることで「ヘルスツーリズム」を実現するための手段にもなります。
「新・湯治」は、日帰りや1泊の短い期間でも効果があります。環境省が行った調査では、温泉に入る多くの方の7割以上に症状の改善が報告されました。さらに、年に何回も温泉に行く方には、その効能がより強く表れています。「新・湯治」は現在のライフスタイルに合わせた温泉の楽しみ方の一つです。温泉地には、自然や文化や歴史が豊富にあります。それらを楽しみながら、温泉に入って、体と心の健康を保ちましょう。
湯治の効果を実感するためのポイント
湯治の効果をより実感するためには、いくつかポイントがあります。適切な入浴時間や回数を守り、入浴中はこまめな水分補給を心がけましょう。無理のない範囲で、ご自身の体調に合わせて湯治を楽しんでください。
関東のおすすめ湯治場4選
関東には様々な特色や効能を持つ湯治場が複数あります。その中で、日帰りでも利用できるおすすめの湯治場を4選、ご紹介します。わずかな時間でも日常を忘れて、ゆっくりと療養してみてください。効能については、個人差があるため保証するものではありません。しかし、自分の身体にあった温泉を探してみるのも、現代湯治を楽しむための要素です。
群馬県 積善館本館
群馬県吾妻郡中之条町四万温泉にある積善館本館は、江戸時代から営業している、歴史と伝統がある
出典:「SHIMA ONLINE | 四万温泉観光ポータルサイト⧉」|SHIMA ONLINE | 四万温泉観光ポータルサイト
https://shimaonsen.com/
温泉施設です。本館は木造の古建築で、群馬県からは重要文化財に認定されています。ここでは、宿泊客は自分で布団を敷いたり片付けたりするなど、昔ながらのスタイルを楽しめます。
日帰り温泉として利用できる「元禄の湯」は、昭和5年に建てられた浴室に、5つの石の浴槽があります。ここには、蒸し湯というお風呂の原型があります。脱衣所と浴室が一緒になっていることも特徴です。日帰り温泉の受付時間は17時までなので、ご注意ください。
泉質と効能
四万温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム 塩化物硫酸塩温泉です。この泉質は、リウマチや運動器障害などに効果があるといわれています。また、女性の病気や更年期障害にも良いとされています。四万温泉は、古くから「四万の病に効く」と言われるほど、さまざまな病気に効果がある温泉です。「日本三大胃腸病の名湯」と呼ばれ、胃腸病にもとても良いとされています。また、塩化物・硫酸塩泉の温泉は、肌に潤いを与えます。四万温泉は、新鮮なため飲泉が可能です。飲用すると、消化器や肝胆道の病気、蕁麻疹や肥満にも効果があると言われています。
アクセス方法
車で向かう際にはいくつか注意事項があります。冬季はスタッドレスタイヤの装着または、タイヤチェーンが必要です。本館の駐車場入口は狭くなっているため、事故に注意してください。経路は中之条から国道353号線で約25分かかります。
電車の場合はJR吾妻線中之条駅から路線バスで約40分、タクシーで約20分の距離です。送迎サービスはありません。東京・埼玉方面からは直通バスも運行されている場合がありますので、事前にご確認ください。
参考情報
埼玉県 おがわ温泉 花和楽の湯
埼玉県比企郡小川町にあるおがわ温泉 花和楽の湯は、「現代の湯治郷」をコンセプトにした関東の湯治場です。日帰りでも温泉が利用でき、Ph10.0のアルカリ性の天然温泉や、高濃度の炭酸泉、埼玉県で唯一のラジウム陶板浴が楽しめます。ここには食事や宿泊ができる施設もあり、プチ湯治が楽しめます。ラジウム陶板浴には女性専用ルームもあり、医師が監修した療養設備です。デトックス効果も期待でき、身体の内側からきれいになりたい方にもおすすめです。
泉質と効能
Ph10.0の強アルカリ性の温泉は、肌をツルツルにする「美肌の湯」と呼ばれ、慢性的な痛みや疲労、胃腸の不調などに良いと言われています。そのため、湯治にぴったりの温泉です。高濃度の炭酸泉では血行を良くして疲労回復や健康増進に効能が期待できます。長く浸かることで効果が上がるため、38~39℃のぬるめに設定されています。ラジウム陶板は、ラジウムを含むラドン熱気浴です。体に与える刺激によって、生活習慣病や慢性的な痛み、アレルギーや炎症、気管支の疾患、さらにはガンなどに効果が見込めます。ただし、これらの効果は個人差があり、医療効果を保証するものではありません。
アクセス方法
車で向かう場合は、関越自動車道の嵐山・小川ICを降りて約5分走ると到着します。電車で向かう方法は、東武東上線の小川町駅から徒歩で約10分です。バスで行く場合には、小川町駅から「小川パークヒルゆき(小川赤十字病院経由)」のバスに乗って、おがわ温泉花和楽の湯のすぐ前で下車できます。バスの所要時間は約2分です。
参考情報
神奈川県 有馬療養温泉旅館
神奈川県川崎市宮前区東有馬にある有馬療養温泉旅館は、首都圏に位置しながらも静かで、歴史ある温泉宿です。交通の便も良く、生活に必要な施設が揃った土地柄のため、高齢の方や病後回復時も安心して長期滞在できる湯治宿としても知られています。白鳳の昔より病を悉く除くと伝わる霊光泉は、朝一番に金色に輝く茶色いにごり湯で、さまざまな病気に効果があると言われています。昔から修験道や祈祷の場として使われてきた霊泉は、循環ろ過、加水、塩素消毒などをせずに源泉かけ流しで提供されています。温泉療養や湯治に適した療養温泉です。日帰り温泉は立ち寄り湯として、食事付きプランも用意されています。有馬療養温泉旅館は、健康な体を取り戻すための温泉を楽しめる湯治宿です。
湯治滞在中の食事は、一汁三菜程度の素朴な家庭料理が基本で、夕朝食ともに日替わりの献立が部屋食で提供されます。体に負担になりにくいよう配慮されており、ボリュームの調整も可能です。館内に自炊設備はありませんが、宿周辺にはスーパーやコンビニ、飲食店などが徒歩圏内に多数あり、長期滞在にも便利です。客室は和室6~8畳が中心で、テレビ、エアコン、冷蔵庫、電気ポットが備わっています。共同利用の電子レンジや無料Wi-Fiも利用可能です。トイレ洗面付きの客室もあります。また、長期滞在に便利なランドリー設備も男性脱衣所内と旅館裏側に完備されています。
泉質と効能
泉質は単純炭酸鉄泉(単純鉄冷鉱泉)です。鉄分が主成分のため、透明な源泉が浴槽では温められて茶色に変化します。源泉の量や温度、かき混ぜる回数などによって色が変わるため、その違いを楽しむことができます。「子宝の湯」とも呼ばれ、月経障害、不妊症、婦人病、冷え性に対して効能が期待できると言われています。その他に、心臓神経症、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、腸カタル、痔、慢性皮膚病、しびれ、うちみ、くじき、慢性消化器病、病後回復期、疲労回復、健康増進など、幅広い適応症があるとされています。ただし、これらの効能は個人差があり、医療効果を保証するものではありません。
料金
湯治プランは3泊4日~の申込みとなります。1泊1名あたりの料金は以下の通りです(入湯税1名1泊150円が別途かかります)。季節により300円~1,000円程度の料金変動がある場合があります。
- 6畳 トイレ洗面付: 8,800円~(税抜8,000円~)/1名1室
- 8畳 トイレ共同: 7,700円~(税抜7,000円~)/2名1室
- 10畳 トイレ洗面付: 8,250円~(税抜7,500円~)/2名1室
- 6畳 トイレ共同: 7,700円~(税抜7,000円~)/3名1室
- 6畳 トイレ共同: 8,250円~(税抜7,500円~)/1名1室
逗留食指定で欠食の場合、夕食は1,000円引(税別)、朝食は700円引(税別)となります。昼食の追加は900円~1,500円、湯治食(6~7品のお食事)への変更は上記料金の1,330円増となります。滞在時間の延長も可能です。初日チェックイン13時~は1,100円増~/1名。最終日チェックアウト17時までは3,850円/1名1室、3,300円/2名~1室。21時までは上記17時まで延長料金に1,100円増となります。それ以外は1名時間あたり1,100円増となり、21時を過ぎる場合は各素泊り料金が発生します。
注意点
- チェックインは15:00~、チェックアウトは~11:00です。
- 水曜日を初日とするご予約はできません。
- 短期の湯治プランのご予約は2ヶ月前同日より受付開始となります。
- 急な体調不良など緊急時に備え、保険証を必ずお持ちの上ご提示ください。
- 連休時や年末年始等の特定日などは湯治プランの受付をお休みする場合があります。
- 毎週水曜日は源泉の管理日で、入湯できない日程があります(シャワーのみ利用可)。
- 日々の客室清掃はお客様に適宜お願いしており、シーツ交換は3泊に1回です。
- 他滞在者様の予定変更や宿都合により、滞在日程の再調整をお願いする場合があります。
参考情報
栃木県 芦野温泉
栃木県那須郡那須町にある芦野温泉は、自然豊かな湯治場です。2つの自家源泉から湧出するアルカリ性単純温泉は、その効能から「杖忘れの温泉」と呼ばれています。薬草の湯や露天風呂など、様々な浴槽が楽しめます。芦野温泉は食事や休憩もできて、日帰り入浴も可能です。日帰りバスツアーもあるため、気軽に温泉療養が味わえます。
泉質と効能
泉質はアルカリ性単純温泉で、非循環式の掛け流しで提供しています。この泉質は、美肌効果や様々な病気の予防や改善に効能があるとされています。特に、生薬を配合した薬草の湯は、神経痛や関節痛などの症状に効くと評判です。また、化粧水のようなツルツル湯やメラの湯など、肌に優しい湯もあります。浴場は清潔に保たれているため、いつでも新鮮な温泉に入れます。これらの効果は個人差があり、医療効果を保証するものではありません。
アクセス方法
車の場合は、東北自動車道那須ICを降りて約25分の場所です。電車を利用する場合はJR東北本線那須塩原駅または黒磯駅まで行くと、そこから無料送迎バスがあります。ただし、利用には事前の予約が必要なためご注意ください。
参考情報
まとめ
関東でおすすめの湯治場を4選ご紹介しました。湯治は、伝統的な長期滞在だけでなく、現代のライフスタイルに合わせた日帰りや1泊の短い期間でも心と身体に良い効能が期待できます。日常の疲れやストレスの解消だけでなく、病気の予防効果も期待できる「新・湯治」は、現代人にとって非常に魅力的な健康法です。
疲れやストレスに悩んでいる方は、ぜひ関東の湯治場で「新・湯治」を試してみてはいかがでしょうか。ただし、持病がある方は、温泉に入る前に必ず主治医に相談してください。温泉に入る際には、適切な入浴時間や回数を守り、水分補給を忘れないようにしましょう。ご自身の体調と相談しながら、現代のライフスタイルに合わせて、温泉の楽しみ方を見つけてください。
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